top of page
検索
  • 執筆者の写真中森あやか

HOW TO MAKE FLYER

更新日:3月12日


作品の製作工程を紹介したいと思います。




※以下作品に関するネタバレが含まれます。




■対象公演

劇団ZTON vol.14「ソラノ国ウミノ国」


■共同製作(同不順・敬称略)

脚本演出:為房大輔(劇団ZTON)

撮影:脇田友(スピカ)

衣装:鈴木貴子

メイク:KOMAKI

被写体:高瀬川すてら(劇団ZTON)・久保内啓朗(劇団ZTON)


上記の方々との共同製作作品となりました。

さも私の作品かのように取り扱っておりますが、スタッフキャストの皆さまのおかげです。




■あらすじ

数百年の昔、ソラノ国はウミノ国の軍勢と戦い勝利を得た。

ウミノ国の軍勢は 異形の物。

目にすれば視界がつぶれ、声を聴けば音を失う。

ウミと交わるな。交われば其は災厄となり、ソラを堕とす。

《ソラノ書 第二節》

親から子へ、連綿と語り継がれる『ウミノ国』の伝説。

『ソラノ国』と『ウミノ国』は、高くそびえたったカイリの壁によって分けられ、その交わりは長きにわたり禁じられていた。

…禁じられていたはずだった。

ソラノ国の貧民街に住む少年、ハル。

ある日、彼は一通の手紙を手に入れる。

差出人の名は、アキ。

届くはずのない2人の願いが交差し、閉ざされた壁が開くとき、ソラとウミの真実が明かされる。

「さぁ、ソラを堕とし、ウミを解かす時が来た」




■製作工程


まずは、



◎バナーとロゴ



・あらすじ

・キャッチコピー

・キーワード

・世界観

・一番話の大きなギミック

上記を脚本家に共有いただき、まずは情報解禁用のバナーおよびロゴを作成しました。

耽美で少し儚い世界観と物語から、今回は細身で漂うような”うつくし明朝”をメインで使用しています。



<ロゴの仕掛け>

ファンタジーぽさと意識しつつ、二国を隔てる壁をロゴに組み込みます。

ソラは羽っぽく、ウミは泡っぽく。


そして作中解き明かされる「ソラノ国は実はウミノ国と同一だった」という最大の謎をロゴに忍ばせます。

公演後に驚いてもらえるようにさりげなく。



ここからマイナーチェンジを繰り返し現在にいたる。

"国"も水面に反射するような鏡合わせの形状に変更。ここも意図的にズラします。




バナーデザインは「ソラを堕とし、ウミを解かす時がきた」というコピーから、謎を解くキーアイテムである「ソラノ原書」が海に堕ちて解け出すその瞬間をイメージしたものになりました。

「ソラノ原書」はフリー素材をベースに、向きを変えたり、ページを開けたり、水面の反射を映したり、ちまちま泡をつけたりといった合成を重ね、「どぽん」と落ちるエフェクトを加えました。





<チラシ>

いよいよチラシ製作。


この段階でもう脚本ができあがっている。すばらしい。


作品のコンセプトは「自分の中で相反する気持ち、思想の中で、何を選択し、どう生きるか」とのことでした。


そういった指向性を中心に据えつつ、フライヤーでは「主人公となるハル(男性)とアキ(女性)の心の繋がりと、行き違いになってしまう悲劇」への暗示を詰め込もうと勘案しました。




<構図>

とにもかくにも構図が大切。

脚本家と意見を出し合います。(もっとたくさんあったけど割愛)




結果、互いに手を差し伸べ合う・向き合うのではなく、ボトルメールを通して壁の向こうに思いを馳せるような構図にしました。


縦ベースにするか横ベースにするか悩んだり。



あらすじ上は、

ハル→ソラノ国の住民

アキ→ウミノ国の住民

であるかのようなミスリードがあるのですが、実はそうではないというギミックがあるので、あえてアキを上にハルを下に配置し、貧民と騎士の立場を示す位置関係に変更。


手を伸ばす方向は、ハルはウミからアキを掬い上げようとし、アキは本音の言えない立場からの自由を求めるという志向性を持たせました。

しかし実は「手を伸ばす先にお互いがいなかった」という要素も物語にリンクさせます。





この段階で、公演本番になったら絶対やりたいことがあったのですが、それはまた後述。




<撮影>

色々アイディアを共有しつつも馬鹿の一つ覚えみたいに「とにかく浮遊感をお願いします!」と連呼。

また、役者には細かな手の向きやニュアンスにも配慮してもらいました。

ジャンプしてもらったり、風で服を舞わせてもらったりとおねがいしまくり。





すでにいい写真です。


最高。現場のみなさん本当にありがとう。




<背景>

ここからこの二人とボトルメールを合成して背景ベースとなじませていきます。

「ボトルメールで繋がっている」というのは大変重要なので、ピカっと光らす。


二人を海の中に入れたりしましたが、空間の写実性が高いとしっくりこなかったので、スモークを焚きまくりながらクジラを泳がせ、徐々に「空とも海ともつかない」背景に。





パンフレットの表紙に使った全体背景はこんな感じ。






<枠>

空間を枠で区切りつつ、お互い「国」という隔たりから自由になるために伸ばす手の先が少し超越するようにしました。




この段階で空間の隔たりを表現するために、アキを腰で裁断したり、ハルの下半身を別の写真とすげ替えて浮遊してるようなポーズにしたりと、役者(の写真)にもだいぶ無理をしてもらいました。

空間は裂けていてもボトルメールは繋がってる、という位置どり。




<ふたたびロゴ>

ロゴは構図に合わせて新しいものを製作。

先に作ったロゴは裏面に。

それぞれ空模様と海模様に見えるけど実は一枚の写真から加工して作っています。

ところどころ文字が溶け出す(解け出す)ようなブラー(ぼかし)がかかっているのがアクセント。

また、真ん中で分割線のあちら側にもこちら側にもソラとウミのロゴが存在するように配置します。







<微調整>

だいぶ形ができてきましたね。


もう少し。


と思ったけどここからが長かった。ここまでで60%くらい。

あとは文字配置と微調整の世界。

微妙な差ばっかりなので割愛!





最終形に落ち着きました。



ざらっとした質感を出したかったので、紙はマットコート110kgを使用






<本番で完成する>

そして公演の本番。

受付のロビーではチラシを少しズラして縦に配置してもらいました。





“何かがずれていたら、手を取り合えたのかもしれないという予感”

(アキ役 高瀬川すてら氏のTwitterより引用)


公演本番で初めて完成するフライヤーという新しい着想をくれた「ソラノ国ウミノ国」という作品に感謝。


本番すごくよくってめっちゃ泣きました。

だいたい本番みると「もっとこのニュアンスを表現できていれば…!」と反省をくりかえします。


ちなみにこちらのフライヤー、撮影含めフルリモートで製作しております。


To be continued…




***************



ご依頼検討いただける方はどうぞ以下からご連絡くださいませ。



演劇以外のビジュアル製作も大歓迎です。

条件や納期によりますが、今回のキービジュアル製作で3万円前後の人件費を頂戴しています。(DM・グッズ製作など付帯デザイン別料金)


また、AIで素材を生成することで、撮影を行わず(or最低限)に作るビジュアルの製作もお請けしております。

作品例↓



こちらのフライヤーは400回近くプロンプトを施行し生成した素材の合成で製作しています。






閲覧数:36回0件のコメント

© 2019  Nakamori Ayaka

bottom of page